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道の駅 明治の森・黒磯

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農家の編集部通信 vol.3 「和泉さんの経産牛カレー」

2025.08.01

みなさんは「経産牛(けいさんぎゅう)」をご存じですか?

経産牛とは、その名のとおり出産を経験したお母さん牛のこと。
搾乳牛としての役目を果たしてきたそのお肉は、しっかりとした赤身が特長です。霜降り肉とは異なる、味わい深い旨味が魅力ですが、市場ではまだ十分に評価されていないのが現状です。

大切に育てられた牛たちの命を、最後まで美味しくいただくこと。そして、その価値を引き出すこと。そんな思いを出発点に、農家の編集部では経産牛を主役にした商品開発がスタートしました。

道の駅「明治の森・黒磯」だからできることを詰め込んで

経産牛をおいしく食べていただくことにこだわり、繊細な味の調整を重ねてようやく完成したのが「和泉さんの経産牛カレー」。

道の駅「明治の森・黒磯」のダイニングで提供している経産牛のカレーをベースに、自宅やお土産用に持ち帰りができるレトルトカレーを作りました。

しっかりとスパイスが効いているけれど、お子さまから大人まで、みんなが美味しく食べられるカレーです。ゴロっとしたお肉をたっぷり入れて、経産牛の味わいを存分に感じていただけるように仕上げています。

コクのあるしっかりとした味わいの秘密は、「スキムミルク」。

明治の森のミルク工房で、発酵バターを製造する際に生まれる副産物・スキムミルクを加えることで、よりクリーミーでマイルドなカレーに。

地元の生乳を使った乳製品を施設内で加工している明治の森だからこそできる、牛たちの命のめぐみが詰まった商品です。

牛にも、人にも、そして環境にもやさしい酪農

今回私たちに力を貸してくれたのは、明治の森から車で3分の場所にある和泉牧場さん。ご近所さんということもあり、スタッフの研修などでも日頃から世話になっている牧場です。

和泉牧場の3代目・和泉正行さんが目指すのは、牛も人も無理をしない、環境にやさしい酪農。

牛を飼育する面積に対して過剰な頭数を抱えると、排泄物の蓄積によって土が窒素過剰になり環境に悪影響を与えてしまったり、牛舎内での事故を引き起こすことがあります。そこで和泉さんは、ゆとりのあるスペースを確保して、牛たちがのびのびと育つ環境作りを意識しているといいます。

「牛に負担がかかる環境で飼育すれば、病気にもなりやすくなってしまう。すると治療や牛のケアに人にも負担がかかってしまうんですよね。それよりも牛を元気に育てること。頭数を増やして目先の収益を上げるより、余裕のある形で生産を続けたほうが、結果的に牛も人も、みんなが幸せになれると考えたんです。」

和泉さんは、牛の排泄物から作った堆肥を畑に散布して牛たちの飼料作物を栽培する「循環型酪農」にも取り組み、牛を中心に自然の資源がぐるぐると回る仕組みを作っています。

創業から50年以上続いている和泉牧場。

全国的に離農が問題になっているなかで、和泉さんは酪農を“夢を見られる産業”にしていきたいと語ります。

「飼育にかかるコストが高騰して、収益性を上げるのが難しい今の状況では、子供たちに「酪農をやりたいか?」という問いかけもしづらいと感じています。そのなかでも、一生懸命にやればやっただけ返ってくる酪農の面白さを伝えていきたい。酪農の魅力を子供たちに直接伝えられなかったとしても、その姿を見せなければ、と考えながら仕事をしています。」

トラクターに乗りながら、いつもこれからどうするべきか考え続けているという和泉さん。

日常の作業の中でやりながら気づいた課題を一つひとつ改善していく、その繰り返し。大きな困難に直面しても、良いと思った方向へ舵を切り続けてきたことで今の和泉牧場があります。

牧場から食卓まで。いのちの行方がわかるカレー

和泉牧場では年間で20〜25頭の後継牛が生まれ、入れ替わりで繁殖障害などで分娩ができなくなった牛が経産牛として出荷されます。

痩せていて肉量が取れない経産牛は安く買い叩かれてしまったり、最悪の場合処分されてしまうこともありますが、ゆったりとした場所ですくすくと育った和泉牧場の牛たちは自然と体が大きくなり、さらに再肥育をすることで高値で取引ができているのだそうです。

通常、経産牛は食肉処理場に出荷されると、その後どうなったのかを追うことはできません。和泉さんにとっても、今回のカレーのように牛たちの行方が明確にわかる形で売り出されるのははじめてだといいます。

「今は全国的にも経産牛が注目され始めていて、自分たちの牧場以外にも今後このような取り組みが広がっていくのではと期待しています。このカレーをきっかけに、この地域の酪農が盛り上がってくれたら嬉しいです。」

明治の森では、そんな和泉さんの経産牛を一頭買いして使用しています。

その魅力をぎゅっと詰め込み、心を込めて作り上げた「和泉さんの経産牛カレー」。
味わいのなかには、「牛たちの命を、最後まで大切に活かしたい。」という願いと、地域の営みが込められています。

驚くほど柔らかい食感と、噛むほどに広がる旨味が、このカレーのいちばんの魅力です。

じっくり煮込んだ経産牛肉は、脂肪が少なく、しっかりとした旨味が特徴です。

みんなが大好きな牛肉の生産には、実は酪農も深く関わっています。

酪農から生まれるお肉の価値を、もっと多くの方に知っていただきたい。

本商品が、そのきっかけになればと考えています。