農家の編集部通信 「vol.2 農家のアイスミルク」
道の駅「明治の森・黒磯」のミルク工房が稼働をはじめてから約1年。
これまでに35tもの生乳が牛乳やソフトクリーム、発酵バターなどに生まれ変わり、たくさんの食卓に届けられてきました。
毎日生乳と向き合うほど感じるのは、那須塩原の質の高い豊かな味わいや、それを休まず届けてくれる酪農家さんのひたむきな思い。

「この生乳のおいしさや可能性を、たくさんの人に伝えていきたい。」
「もっともっとその価値や可能性を伝えるにはどうしたらいいだろう?」
そんな思いから生まれ、新たに明治の森のオリジナル商品に仲間入りしたのが“ 農家のアイスミルク ”です。

完成したのは、ミルク工房で製造した牛乳をベースにした「ミルク」と市場に出せない規格外のイチゴを使った「いちご」の2つの味。
イメージしたのは“思い出に残るアイス”。
何よりも生乳の魅力を引き出すことを大切に。ひと口食べたら思わず笑顔になるような、シンプルだけれど奥深い、ミルク本来のおいしさを最大限に生かした味わいに仕上がりました。
いちご味のアイスのベースに使われているのは、スキムミルク。
牛乳からバターを作る際に大量に生まれるものの、活用しきれずに捨てられてしまうことが多い副産物です。ミルク工房でも発酵バターを製造する際にスキムミルクがでますが、アイスに活用できるようになったことで、「もったいない」を「おいしい」に変える仕組みが出来上がりました。
バトンをつないで完成した“いちご味”
いちご味の主役となるのは、那須塩原市のAgny農園さんの規格外のとちあいかです。そしてイチゴをアイスに加えるためのジャムに加工してくれたのが、Coquelicot(コクリコ)の白土さん。今回も発売に先駆けて、商品開発部の北村がおふたりにお話を伺いました!

(左)竹村さん、(右)白土さん
Agny農園の竹村功平さんは、結婚を機に移住して今年で3年目。祖父母が営む熊本の農園のイチゴの栽培方法や肥料を取り入れて、いちから那須塩原での生産をスタートしました。
竹村さんの畑では、1日平均で3kgの規格外イチゴが出ます。1ヶ月で考えると合計100キロほど。どれも「これが規格外なの?」と驚いてしまうほどきれいで甘いイチゴばかりです。形が不揃いだったり、日持ちしない完熟のイチゴは市場に出せないのだといいます。

竹村さんは、農業を始める人よりも辞める人の方が多い時代を前にする中で、今やっている農家がそれぞれ規模を大きくして生産量を崩さないことが大切だといいます。
「アイスを通して頑張っている農家がいることを知ってもらうきっかけになったら。」
「これから農家同士で協力することがこれまで以上に重要になってくるなかで、この取り組みを通して同じような目線で協力し合える仲間との繋がりが増えたらうれしいです。」

「自分が勝手に思っているだけですけど」と竹村さんがはにかみながら教えてくれた農園のキャッチフレーズ は “日々の生活に小さな幸せを”。
「忙しい毎日で忘れがちなことですが、アイスを通してささやかな幸せを感じてもらえたらと思います」

竹村さんからバトンを受け取り、規格外イチゴをアイスにぴったりのジャムに変身させたのが那須塩原市のカフェCoquelicotの店主・白土莉香さん。
2016年にお店をオープンしてから9年。年間で30〜40種類も製造しているというCoquelicotのジャムは、明治の森のマーケットでもおなじみの人気商品で、那須塩原ブランドにも認定されています。
白土さんが心掛けているのは、しょっぱ過ぎたり、甘過ぎたり、“〇〇すぎない味”。さまざまな食材の組み合わせを試しながら、老若男女誰が食べてもおいしい、優しい味わいのジャムを作り続けています。

アイス用のジャムは、竹村さんから届く大量のイチゴを一番いい状態でジャムにするために届いたその日に加工しています。
「カッチリとレシピ通りに作るジャムよりも、“お母さんがさじ加減で作るジャム”の方がおいしい気がするんですよね。」とほほえむ白土さん。
個性豊かなイチゴたちの声に耳を澄ませて、おいしくなあれと心を込めて、おいしいジャムをたくさん作ってくれました。
「アイスを食べておいしいと感じたら、誰かにそのことを伝えたり、贈り物にしてもらえたらうれしいです。」

竹村さん、白土さん、明治の森の商品開発チームの思いが重なり合って生まれたアイスミルク。
スプーンですくって口にした瞬間、ふわっと広がるおいしさの向こうに物語が浮かびあがるような。そんな思い出に残る味わいを、どうぞお楽しみください。